9日のリベラルアーツでは、『コーラン(上)』の解説部分を読んだ。そこにはコーランの翻訳不能な音声要素についての記述があり、それは当時西アジアに存在した巫女的呪術性があることが示されていた。
すでに我々は、コーランがユダヤ教、キリスト教を踏まえたものであることは確認してきた。では、その呪術的文体はどこから来たのだろうか。
そこで、岩波文庫の解説ではどこか足りないと思ったので、7世紀にイスラム教が起こると急速に衰退したゾロアスター教の『アヴェスター』を読んでみた。ゾロアスター教は3500年の歴史がある宗教であり、その成立はモーセ以前であり、ペルシア帝国の宗教であった。宇宙創造の絶対神であるアフラー•マズダを中心に、善悪の対立と克服を教えるこの宗教は「拝火教」としての呪術的な側面も大きかった。『アヴェスター』は、アフラー•マズダを讃え、やがてゾロアスターにそれが乗り移る形を取る。これは言うまでもなく、アッラーとマホメットとの関係と相似である。
こうして見ると、イスラム教は、西アジアにおける先行する古代宗教の要素を統合してできたものであることが分る。このことからも、マホメットが文盲であったとはまず考えられないことである。
さて、メソポタミアを中心とした西アジア地域は、繰り返し戦乱状態にあった地域である。そして、絶えず水不足に苦しんだ地域である。ほとんどが砂漠かスッテプ地帯であり、木が生えているところは極めて少ない。これは、日本と全く逆の状態である。日本国内に外国の軍が上陸侵入したのは、第二次世界大戦の米軍が初めてであり、しかも沖縄以外はほとんど戦闘らしきものが行われた形跡はない。しかも日本は、水が豊富でそこら中に森林がある環境である。世界でもまれに見る平和で安全でしかも水に恵まれた国、しかも気候的に温暖で200年以上も鎖国しても全く問題がなかった国である。この西アジアとは似ても似つかない歴史的環境的土壌の日本には、一神教は存在しなかった。アマゾン原住民同様、自然の背後に多くの精霊(八百万の神)が存在すると言う宗教観であった。
この上で、2003年の東京大学の国語入試問題を読んだ。これは、日本人が祟りの思想の文化下にあることを示し、戦没者の遺骨収集が今も続くことを解説した文章である。そもそも平和で自然に恵まれた国なので、地域や国のために命を落としたものに対して、生き残って幸福に暮らす者たちに「負い目」、そして祟りを怖れる思想があることを示したものである。
私は驚いた。これまでリベラルアーツに出席し続けた者は、このぐらいの文章なら平気で読解できてしまうのである(生徒は中1〜高2)。このことから逆に、私は我が国の公教育における国語教育の欠陥が透けて見えたような気もした。本当の国語力をつけるには、大人の思想の基となった書物を読み、それについて議論することが欠かせないのだ。一部の私立校でのみ可能なこの教育法を公教育が行うことは不可能に近いことなのかもしれないが、つまらない教科書の読解練習よりも、我が国古典文のしっかりとした音読を行い、作文法を教え、その上で世界の宗教書のダイジェスト版を読ませて議論させることは多くの学校が取り入れても良いことだと思わざるを得ない。
次回リベラルアーツは『コーラン(下)』を用いるので、よろしく準備して参加して欲しい。
*写真はトウガラシ
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